2023-05-25 19:49:32.307186

労働時間について学ぶ前に

シリアスなジャンルです

  • 使用者はとても気にします
  • 法令解釈と労働者・使用者が考えることとは必ずしも一致しません。
  • 法令がほぼ毎年変わります
    • 昨年と同じ話が通じないことがあります
    • 変わらない点も多いです
    • とにかく勉強するしかありません

学びましょう

  • 成書は多く官公庁発行資料も多い。
  • 使用者による主張には誤りがあることがある。
  • ワークルール検定教科書と問題集は、法令についてよくまとまっている。
  • 数値については、各公的統計解説および数値を眺めるといいでしょう。

労働時間

人的資源を長期に活用するには

  • 労働しない時間が必要
    • 疲労する(健康保護)
    • 人間は社会的動物(家族的・社会的・文化的生活の保証)
    • 雇用創出
  • 労働時間については法令が定める内容が多い。企業ができることはまず法令遵守。

日本国憲法は定める

  • 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  • 第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を 有し、義務を負ふ。
    1. 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

労働時間については法令が定める

  • 日本国憲法を体現するから
  • 使用者はもれなくしたがう必要がある(強行法規)
    • 労働時間を遵守しない使用者や会社は淘汰されて当然
    • 労働者は使用者による無理難題につきあう必要はない

労働法

労働にまつわるさまざまな法令

  • 労働問題に関する法律のかたまり
  • いわゆる判例法理もたくさん。
  • 労働基準法がもっとも重要
    • 121条と附則
    • 罰則あり

登場人物紹介

  • 労働者と使用者
    • 労働者:指揮命令下に就労して賃金を支払われる者
    • 使用者:経営者と法人(会社)。使用者としての権限を有する者。
    • ふたつあわせて労使(ろうし)と呼ぶ
  • 管理監督者:労働条件決定および労務管理について経営者と一体的立場にある者

労働法上の労働者などなど

  • 労働者:職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者(基9)
    • 労働契約を締結した者
  • 使用者:事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者(基10)

管理監督者

  • 管理監督者:労働条件の決定その他労務管理について一体的な立場にある人(基41(2))
  • 管理監督者は労働基準法に定められる労働時間、休憩、休日に関する制限を受けない。深夜割増賃金と年次有給休暇は労働者と同一
    • 管理監督者かどうかは、基準にて総合判断
    • 労働組合法がいう「監督的地位にある労働者」とは異なる

労働者の要件

使用従属性

  • 使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者(契2)
    • 業務諾否の自由の有無
    • 業務遂行における使用者の指示の程度
    • 時間的・場所的拘束性
    • 労務提供の代替性

管理監督者の要件

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

労働日・休日・労働時間

  • 労働日:労働契約において働く義務がある日
  • 休日:働いてはいけない
  • 原則
    • 8時間/日(三分説)、40時間/週(基32、法定労働時間)。
    • 6時間働く場合は間に45分、8時間働く場合は間に1時間以上の休憩(基34(2))
    • 1日/週ないし4日/4週の休日を与えなければならない
    • 例外はたくさんある(基33(1・3)、基40、労基則25(2))

労働時間法制展開

  • 当初は8時間/日、48時間/週。ILO条約未達。\(\rightarrow\) 段階的に短縮、1997年から40時間/週に。
  • 途中にさまざまな葛藤あり
    • 36協定における特別条項
    • 過労死・過労自殺
    • 弾力的労働時間運用:変形労働時間、フレックス、裁量労働制

労働時間分類

労働基準法上の労働時間と労働契約上の労働時間

  • 労働基準法上の労働時間
  • 労働契約上の労働時間
    • 所定労働時間:就業規則や労働協約に定めた労働時間
    • 所定外労働時間:労働契約外の労働時間
    • 休日労働時間:休日における労働時間
    • 深夜労働時間:深夜(22-5時)における労働時間

労働時間模式

労働時間とは

平成12年3月9日最高裁第一小法廷判決 平成7年(オ)第2029号

  • 使用者による指揮命令に服する時間(単一要件説、契7)
    • 作業時間だけではなく準備や構内移動、仮眠も含む
    • 労働時間かどうかは客観的に判断される
  • さまざまな就労形態に対処可能な学説は現在検討中

36(さぶろく)協定

平成3年11月28日最高裁第一小法廷判決 昭和61年(オ)第840号

  • やむを得ない場合の例外が労働基準法第三十六条に定られる(免罰的効力)
  • 時間外労働命令にはしたがう義務がある(契8、包括的同意説)
  • 原則
    • 原則:45時間/月、360時間/月。罰則あり
    • 特別条項があっても年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(強雨実労働を含む)、45時間/月を超えることができるのは年間6ヶ月まで(例外あり)
    • 例外:研究開発、建設・自動車運転・医師は適用猶予。砂糖製造業。

36協定さえあればいいわけでない

  • 割増賃金を支払う(基37)
  • 時間外労働・休日労働は必要最小限
  • 安全配慮義務(契5)はある

36協定さえあればいいわけでない

  • 36協定相手:すべての労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表)
    • 監督または管理の地位(管理監督者)になりこと
    • 民主的に選ばれたこと(使用者による指名はダメ)
  • 割増賃金を支払うこと
    • 45時間/月を超えた場合:30%
    • 360時間/年を超えた場合:35%

参考 いわゆる過労死ガイドライン

  • 「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第1063号厚生労働省労働 基準局長通達)
    • 1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6か月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強い
  • 業務区分を細分化し、業務の範囲を明確にすること
  • 周知すること(罰則あり、基106)

労使協定とは

昭和43年12月25日最高裁大法廷判決昭和40年(オ)第145号

  • 就業規則を補完する取決
    • 労働法:わが国が決めた法令
    • 労働協約:労働組合との約束
    • 就業規則:労働契約の内容
    • 労使協定:就業規則を補完する内容
  • 労働法>労働協約>就業規則>労使協定

労働時間概況

  • あの「毎月勤労統計調査」
  • 総実労働時間138.0時間/月(うち所定労働時間127.5時間/月、2023年3月、総計)
  • 所定外労働時間:10.5時間/月
    • 景気の先行指標
    • 新規に従業員を採用するよりも先に現在在籍する従業員に長時間労働を強いる
    • 雇用確保という機能もあり

毎月勤労統計調査解説

  • 毎月の賃金と労働時間を調べる統計
  • 一般労働者(パートタイムではない)とパートタイム労働者(終身雇用ないし雇用期間が1ヶ月以上ある者で、所定労働時間ないし週内労働日が少ない)がいる。
  • 労働時間区分
    • 所定内労働時間:所定労働時間とほぼ等しい。
    • 所定外労働時間:所定外動労時間+休日労働時間+深夜労働時間
  • 統計不正については、日本統計学会による報告がすばらしい。

労働時間推移

労働時間推移(つづき)

労働時間推移(つづき)

労働時間推移(つづき)

労働時間推移 まとめ

  • 所定・実労働時間は減少傾向にある
  • 所定労働時間 > 所定外労働時間
    • 所定外労働時間があっていいというわけではない
    • 所定外労働時間を正確に申告しているだろうか。
  • 所定外労働時間が問題
    • 景気変動と企業規模に影響される
    • 所定内と所定外とで企業規模別労働時間が逆転する
  • 就業形態・産業・企業規模・労働時間区分別労働時間推移については、LACS上にある資料参照。

製造業(30人以上、所定内)

製造業(30人以上、所定外)

建設業(30人以上、所定内)

建設業(30人以上、所定外)

指数推移まとめ

  • 産業と就業形態、労働時間区分が影響するらしい
    • 製造業:所定外に長期的変動がありそう。就業形態由来差はさほどないように。
    • 建設業パートタイム労働者は一見明白に激しく変動。一般労働者は変動するが周期・振幅ほぼ一定。
  • 月変動が大きく見える。
  • 100を下回る。

職務に応じた労働時間配分

  • いろいろな事情がある
    • 季節変動
    • ご家庭の事情
    • 職務の性質
  • 原則どおりにならない場合、現実に追従したほうがいいこともある

変形労働時間制とフレックスタイム制

  • 変形労働時間制(基32(2)):使用者都合で労働時間が変わる
  • フレックスタイム制:労働者都合で始業時刻と終業時刻を変えられる
  • ただし
    • 清算期間(1-3ヶ月)内で8時間/日
    • 深夜・休日は適用外

裁量労働制

  • みなし労働時間制(基38(2))に似ている
    • 何時間働いても法定労働時間働いたとみなす
    • 専門職型裁量労働制(基38(3)。26職種)と企画業務型裁量労働制(基38(4))
  • 問題多い
    • 長時間労働になりがち
    • 裁量的でない労働は適用外
    • 運用が面倒:業務範囲、労働者範囲、労働時間、健康確保措置、苦情処理措置、同意、その他いろいろ。

労働時間制度別採用者数

「賃金事情等総合調査」。資本金5億円・労働者1,000人以上、複数選択。

安全衛生管理:職場には危険がいっぱい

安全第一

  • 安全はすべてに優先する
  • かつては安全第三だったらしい
  • 安全より重要なことはない
    • 危険な状態を強いてはいけない
    • 機械設備がなくても安全ではない状態は存在する

安全衛生?

  • 労働災害を発生させないようにすること
  • 労働災害=業務に由来する疾病・傷害
  • 労働基準監督署が認定する

度数率と強度率

  • 度数率:労働者数や労働時間に対する労働災害発生率 \[ 度数率 = \frac{労働災害に由来する死傷者数}{延べ労働時間}\times1,000,000時間 \]
  • 強度率:1,000時間あたりの労働損失日数 \[ 強度率 = \frac{労働損失日数}{延べ労働時間}\times1,000時間 \] ## 都道府県別労働災害指標

都道府県別労働災害指標(つづき)

都道府県別労働災害指標(つづき)

労働時間推移(つづき)

例題 度数率と強度率

  1. 労働時間が8時間/日、労働日数が250日/年、労働者数が500人である工場において、度数率が1.00人であった。年間死傷者数は何人か。

  2. 従業員数4,900人、1名あたり労働時間が年平均1,800時間である工場にて、ある年1名が労働災害にてなくなった。度数率と強度率を求めよ。

解答 度数率と強度率

\[ \frac{死傷者数}{500\times8\times250}\times1,000,000 \\ 死傷者数=1 \]

\[ 度数率=\frac{1}{4,900\times1,800}\times1,000,000=0.11\\ 強度率=\frac{7,500}{4,900\times1,800}\times1,000= 0.85 \]

ハインリッヒの法則

  • 大災害の影に小さな災害あり
  • 1:29:300の法則ともいう。
    • 1:大災害
    • 29:軽い災害
    • 300:ヒヤリ・ハット

クレーン

運転には国家資格取得ないし技能講習を修了が義務付けられます

安全衛生といえば移動式クレーン

  • 事故がとにかく多い
    • ワイヤが切れる
    • 吊り荷がぶつかる・落下する
    • クレーンが倒れる
  • 数々の対策が考案され法令で定められる
  • 作業中は絶対に近寄ってはいけません。回転半径内立入禁止。吊り荷の下に入るな。

フェイルセーフ

  • 機械がこわれても人間に危害が及ばない
  • 安全弁
    • エンジンが停止し油圧が切れてもジブが降りない
    • 燃料節約しようとエンジンをとめることは昔からあった

フールプルーフ

  • 人間が操作を間違えても人間に危害が及ばない
  • ポカヨケとも言われる
  • 巻過防止装置
    • ある程度以上はフックブロックを巻き上げられない
    • ジブを伸ばしながら荷物を吊り上げようとすると意外によく事故を起こす

インタロック

  • 連動する
  • 電子レンジのフタ、洗濯機のフタ、たいていのフタにはついている
  • 食品工場における入口
    • 片方の扉はもう片方が閉まらない限り開かない。
    • 外部から汚染源が侵入しないようにする

5S

整理・整頓・清掃・清潔・躾

  • 職場の基本
    • 整理:不要・不用品を取り除くこと
    • 整頓:必要なものを必要なときに必要なだけ取り出せるようにすること
    • 清掃:ゴミやほこりなどを掃除すること
    • 清潔:清掃された状態を継続すること
    • 躾:上記が自然にできるようになること

ご安全に

身を守るために

法令が守られない

  • なぜか労働法を遵守しない。なぜ?
    • 罰則が甘い
    • 社会的に遵守しないことが讃えられる
    • 不勉強

電通事件

平成12年3月24日最高裁第二小法廷判決平成10年(オ)第217号

  • 安全配慮義務(契5)が認識されるにいたった端緒
  • 過労自殺:長時間労働に由来する自殺
  • 参考 過労死ライン
    • 所定外労働時間80時間:発症2-6ヶ月前
    • 所定外労働時間100時間:発症1ヶ月前

労働者にも落ち度はあるんじゃないか

ありません

  • 『「ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない」場合には、その労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因として斟酌することはできない』
  • ご当人の性格や業務遂行のありさまを理由にしていいわけしてはいけない、という意味。

身を護るために

  • 労働時間記録は基本
    • 手帳に記録する、自分宛てにメールを送る、スマホアプリを使う
    • まずは証拠集めから
  • 相談は法曹専門家に
    • 近くの弁護士会が実施する無料法律相談
    • 日本労働弁護団
    • 労働基準監督署

参考文献

  • 水町勇一郎(2017)『労働法入門』岩波書店。
    • お手軽かつ内容が濃い労働法入門
    • 経営学は労働時間については手薄であることを納得させる
  • 渡辺輝人(2018)『残業代請求の理論と実務』。
    • 残業代解説書にみえるがすぐれた労働時間に関する専門的解説書
    • 労働法令に関する知識が浅いと読めないかも